作品紹介 自分の中に毒を持て（青春出版社） 岡本太郎先生の志が集約された内容です。岡本先生は、あの瀬戸内晴美（寂聴）先生の生き方にも影響を与えた人物です。これほどのド迫力をもった人物はめったに出てこないでしょう。 岡本先生の生い立ちなどは、瀬戸内晴美先生の書籍である太郎先生の母親の岡本かの子女史の伝記『かの子繚乱』で紹介させて頂く予定です。 さて、この本には、いたるところに岡本先生の行動の源となる原石がちりばめられており、しかも、表現は違えど、一貫性があるものばかり。 その中の一片を切り取って、これからの若者に発信したい文面として紹介します。原文は、実際に手に取って読んで頂くとして、少し圧縮して記載します。 『ところで、大学に進もうとする現代の最も恵まれた社会層の若者に対して言うのだが、何がなんでも大学へ進む、進学しなければならないという要請は、いったい何なのであろうか？ 社会的にいい地位につけないから大学に行くのだ。また、学歴は’紳士の身だしなみ’でもある。恰好がつかないから。明治のヒゲの様なもの。 人生には世渡りと本当に行きぬく道、の二つあるが、ほとんどの人間は、どの様にうまく渡って行くかという処世的なスジしか考えない。そのお守りが大学進学。学問に対する切実な願望があるわけではないのだ。 ぼく（岡本先生）は思う、かって若者にとって、社会は厳然としていたし、人生は神秘であり、不可解であった。危険とスリルに満ち、希望と不安の間に揺れ動いていた。 ところが現在社会では全く違い、至るところ、整然と舗装道路がついている。そこには、ハイスピードの直通大型バスが定期的に走っている。車の前面には行き先が明示してあり、それに乗り込みさえすれば、黙っていても目的地に着く。 子供のときから教育ママに仕上げられていく過程なんて、まさにハイウエー・ドライブの様なものだ。スムーズで間違いない。乗り換え場所、行き着く先の様子まで、はじめから全部わかってしまっている。今日の若者は夢がないとか、ばかにチヤッカリして画一的だとかいう批評をよく聞くが、考えてみれば当然なのだ。両親の姿を見れば、自分の未来像もその背後にダブって見えてしまう。』 その他、燃えるような文言がいっぱい。どこを取っても、切っても切っても出てくる出てくる。 フランス生活が原点になっていると思われるので、ヘンリー・ミラーの書籍、『北回帰線』のミラーの生き様がスーパーインポーズされている様に感じるのは、まっちゃんだけでしょうか？ 皆様も岡本太郎先生の情熱に触れてみませんか？ それではまた、カニカニまっちゃんのサラリーマン遊泳　書籍紹介所でお会いいたしましょう。